中古マンションリノベ|「自由」に見えて「規約」と「構造」に縛られる
Tue Dec 23 2025 00:00:00 GMT+0000 (Coordinated Universal Time)
マンションリノベは「見えない制約」とのパズルである。
「新築マンションは高すぎるし、間取りも画一的。中古を買って、自分好みにフルリノベーションしよう」。 この選択は、立地の良さと価格の安さ、そして自由なデザインを手に入れられる賢い方法として人気です。
しかし、マンションのリノベーションは、戸建てのように「好き勝手」にはできません。そこには「構造」という物理的な壁と、「管理規約」という法的な壁が立ちはだかります。これらを確認せずに物件を買うと、やりたかったアイランドキッチンも、無垢フローリングも実現できない可能性があります。
結論:新築よりコスパは良いが、 「水回りの移動」「フローリングの遮音等級」「窓の交換」 など、管理規約と構造による制限が意外と多い。「全部壊して自由に作れる」は幻想。
特に築古マンションの場合、配管の老朽化や電気容量の不足といった「見えない爆弾」を抱えていることが多く、解体して初めて問題が発覚することも珍しくありません。
判断基準:その物件で「理想の間取り」は実現可能か?
1. 水回りの移動(パイプスペースの罠)
キッチンやトイレを大きく移動したい場合、排水管の勾配(傾き)を確保する必要があります。
- 床下空間 :床下の懐(コンクリートスラブと床の間の空間)が狭いと、配管を通すスペースがなく、水回りを動かせません。無理に動かすと、床を一段上げることになり、バリアフリーではなくなります。
- パイプスペース(PS) :マンションの縦方向に貫通している排水本管(PS)は絶対に動かせません。これが部屋の真ん中にあると、間取りの邪魔になります。
2. 構造の制約(壊せる壁、壊せない壁)
- ラーメン構造 :柱と梁で建物を支える構造。部屋の中の壁はほとんど壊せるため、間取り変更の自由度が高いです。
- 壁式構造 :壁で建物を支える構造。低層マンションに多いです。部屋の中にあるコンクリート壁(耐力壁)は壊せないため、部屋を繋げて広くすることができません。
3. 管理規約の壁
マンションのルールブック「管理規約」は絶対です。
- 遮音等級 :多くのマンションで「L-45以上」などの遮音性能が義務付けられています。無垢材などのフローリングを使いたい場合、遮音マットを下張りする必要があり、コストが上がったり、フワフワした歩き心地になったりします。
- 窓・玄関ドア :これらは「共用部分」なので、勝手に交換できません。内窓(二重窓)をつけることは可能ですが、外側のサッシは古いままです。
- 電気容量 :古いマンションでは、建物全体の電気容量が決まっており、各戸の契約アンペアを上げられない(例:30Aまで)ことがあります。IHや大型食洗機を使いたい場合は致命的です。
典型的な失敗:初心者がハマる落とし穴
- 「解体したら想定外」
解体してみたら、図面にない配管が出てきたり、断熱材がカビていたり、コンクリートの壁がボコボコだったり。中古リノベには「開けてみないとわからない」リスクがつきものです。予備費(数十万円〜)を用意しておく必要があります。
- 「エアコンが付けられない」
窓のない部屋(中部屋)を作ったら、エアコンの配管を通すルートがなく、エアコンが設置できない部屋になってしまった。先行配管などの対策が必要です。
最短の手順:後悔しないためのロードマップ
- ワンストップリノベ会社に依頼 物件探しとリノベ設計・施工を別々に頼むと、連携ミスが起きます。両方を扱う「ワンストップ」の会社に依頼し、内見時に建築士を同行させて「この壁は壊せるか」「水回りは動かせるか」をその場で判断してもらうのが確実です。
- 管理規約と長期修繕計画の確認 購入申し込み前に、必ず管理規約(リフォーム細則)と、長期修繕計画書、重要事項調査報告書を確認してください。修繕積立金の滞納が多いマンションは避けるべきです。
- インフラの確認 電気容量の上限、インターネット回線の種類(光回線が引けるか)、ガスの容量などを確認します。