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古民家リノベーション|「安く買える」は罠。新築以上の金と覚悟が必要

2025-12-25 13:20

古民家は「道楽」である。

太い梁、黒光りする大黒柱、広々とした縁側。古民家には、新築には出せない圧倒的な「趣」と「歴史」があります。田舎暮らしブームもあり、数百万円、時にはタダ同然で売りに出されている古民家を見て、「これを安く買ってリノベすれば、憧れの暮らしが手に入る」と夢見る人が増えています。

しかし、その夢は多くの場合、莫大な見積書と過酷な住環境によって打ち砕かれます。古民家の実態は、「耐震性ゼロ、断熱性ゼロの、隙間だらけの箱」だからです。

結論:物件価格がタダ同然でも、現代レベルの「耐震」「断熱」にするには新築以上の費用(2000万円〜)がかかる。「趣」以外のすべてを我慢するか、大金を払うかの二択。

「安く住むため」に古民家を選ぶのは間違いです。古民家リノベーションは、文化財を保護するようなパトロン精神か、寒さと不便さを愛せる仙人のような心がないと成立しません。

判断基準:その古民家は「再生」に値するか?

1. 性能向上のコスト(見えない金)

  • 耐震補強 :ほとんどの古民家は旧耐震基準以前の建物で、現在の基準を満たしていません。基礎が玉石の上に乗っているだけ(石場建て)の場合もあり、コンクリート基礎の新設や壁の補強だけで数百万円かかります。
  • 断熱改修 :土壁は隙間だらけ、床下は土がむき出し。冬は外気と同じ温度になります。これを「住める家」にするには、床・壁・天井すべてに断熱材を入れ、隙間風だらけの木製建具をサッシに変える必要があります。

2. インフラとシロアリのリスク

  • シロアリ・腐朽 :床を剥がしてみたら、大引や根太がシロアリに食われてスカスカだった、というケースは日常茶飯事です。これらは開けてみるまで分からず、工事中に追加費用として発生します。
  • 水回り :水道管が古すぎて鉛管だったり、下水が通っておらず浄化槽の入れ替えが必要だったり。水回りの刷新にも大金がかかります。

3. 住宅ローンと法律の壁

  • ローン :耐震基準を満たしていない既存不適格建築物は、住宅ローンの審査が通りにくく、住宅ローン控除も受けられない場合があります。
  • 再建築不可 :その土地が現在の法律では家を建てられない場所(再建築不可物件)である可能性があります。その場合、一度壊すと二度と建てられないため、リノベーションしか道がありません。

典型的な失敗:初心者がハマる落とし穴

  • 「DIYで直すつもりが…」
「YouTubeを見て自分たちで直そう」と意気込んだものの、傾いた家のジャッキアップや、腐った土台の交換など、素人の手に負えるレベルを超えていて挫折。結局業者に頼むか、そのまま廃墟として放置することになります。
  • 「見た目だけでリフォーム」
キッチンやお風呂だけ新しくして、断熱をおろそかにした結果、冬場のお風呂が寒すぎてヒートショックの危険に晒される。

最短の手順:後悔しないためのロードマップ

  1. ホームインスペクション(古民家鑑定) 購入前に、必ず古民家に詳しい建築士や古民家鑑定士に見てもらいます。建物の傾き、シロアリ被害、腐朽の度合いをチェックし、「直すのにいくらかかるか」の概算を出してもらいます。
  2. 資金計画の見直し 物件価格+リノベ費用が、新築を建てる費用を超えてもその家に住みたいか?と自問してください。リフォームローンは住宅ローンより金利が高い傾向にあります。
  3. 断熱最優先 予算が限られるなら、内装のデザインよりも「断熱」と「サッシ」にお金をかけてください。寒さは暮らしの質を著しく下げます。

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