ペアローン|「離婚」したら地獄。「愛」でローンは返せない
Tue Dec 23 2025 00:00:00 GMT+0000 (Coordinated Universal Time)
ペアローンは「2人の年収」でやっと買える家を買うための劇薬。
都心のマンション価格高騰により、一人(単独ローン)では手が届かない物件が増えています。そこで夫婦それぞれの名義でローンを組む「ペアローン」が人気です。「2人で協力して夢のマイホームを」といえば聞こえはいいですが、それは「一蓮托生」の契約です。
結論:パワーカップルが節税目的(住宅ローン控除の2重取り)で組むならアリだが、「2人の収入を合わせないと届かない物件」を買うために組むのは危険。妻の妊娠・出産による収入減や、離婚時の財産分与で泥沼化するリスクが高すぎる。
どちらかが倒れたり、別れたりした瞬間、家という資産は「負債の塊」に変わります。
判断基準:35年間、2人はずっと「健康」で「仲良し」か?
1. 離婚時のリスク:売るに売れない
「私たちは大丈夫」と思っていても、3組に1組が離婚する時代です。ペアローンの最大のリスクは離婚時です。 家を売ってローンを完済できれば良いですが、オーバーローン(残債>売却額)の場合、差額を現金で用意しないと売却できません。また、どちらか一方が住み続ける場合、相手のローンを肩代わりして借り換える必要がありますが、単独の年収では審査に通らないことが多いです。 結果、 「離婚した元パートナーと連絡を取り合いながら、ローンを払い続ける」 という地獄が待っています。
2. 連帯保証の鎖
ペアローンでは、お互いがお互いの連帯保証人になります。 相手が支払いを滞納したり自己破産したりすると、離婚していようが何だろうが、 自分に請求が来ます 。金融機関にとって、2人の関係がどうあれ「貸した金は返せ」という理屈です。この鎖は完済するまで切れません。
3. 収入減少リスク:女性の負担
妻が産休・育休に入る期間、妻の収入は減ります。その間、夫一人の給料で2人分のローンと生活費、そして子供の用品代を賄えますか? 復職後も「時短勤務」で給料が下がると、返済負担率が跳ね上がります。「なんとかなる」で組むと、家計が火の車になります。
典型的な失敗:初心者がハマる落とし穴
「贈与税」の発生
「妻のローンを早く終わらせたい」と、夫の貯金やボーナスで妻のローンを繰り上げ返済してしまう。 これは夫婦間であっても「夫から妻への贈与」とみなされ、年間110万円を超えると贈与税がかかります。良かれと思ってやったことで税務署から通知が来るのです。
「借入額のMAX借り」
2人の年収を合算すると、驚くほどの金額(例えば1億円オーバー)が借りられます。 しかし、それは「2人が定年までフルタイムで働き続ける」ことが前提の金額です。片方が病気になったりリストラされたりした瞬間、即座に破綻します。
最短の手順:後悔しないためのロードマップ
1. 単独ローンで検討
まずは「夫(または妻)単独の年収」で無理なく返せる金額の物件を探します。これが最も安全で、リスクのない選択です。 「今の家賃より高いけど広いから」と背伸びをするのは危険です。
2. 収入合算(連帯債務)を検討
どうしても予算が足りないなら、ペアローン(2本の契約)ではなく、「収入合算(1本の契約で妻が連帯保証人)」を検討します。 契約が1本なので、事務手数料などの諸費用が安く済みます。ただし、団信やローン控除の扱いは銀行によって異なるので確認が必要です。
3. 公正証書の作成
どうしてもペアローンを組むなら、万が一離婚した時にどう処理するか(家を売るのか、どちらかが買い取るのか、その時の評価額はどうするか)を事前に話し合い、「公正証書」に残しておくくらいの覚悟が必要です。 「愛」でローンは返せません。「契約」で守るのです。
リンク集
国税庁:夫婦間の贈与
生活費や教育費は非課税だが、ローンの肩代わりは贈与になるというルールを確認。法務省:公正証書
契約や約束を公文書にするための手続きについて。