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塗り壁(漆喰・珪藻土)|「ひび割れ」と「粉落ち」は不良品ではなく仕様である

2025-12-25 14:43

塗り壁は 「ひび割れて当たり前」 の素材である。

結論:そのクラックを「味わい」と思えないなら、大人しくビニールクロスを選べ。

「自然素材で空気がきれい」「アレルギー対策に」…そのメリットは本物ですが、塗り壁(漆喰・珪藻土)には 「必ずひび割れる(クラックが入る)」 という宿命があります。木造住宅は常に動いています。その動きに追従しきれず、入隅(部屋の角)や窓枠周りに亀裂が入るのは「物理現象」です。これを「施工不良だ!直せ!」と騒ぐような神経質な人は、絶対に採用してはいけません。

判断基準:メンテナンスの地獄と向き合う覚悟

塗り壁は、ビニールクロスのような「手軽さ」が一切ありません。

1. 物理的挙動(クラックと粉)

  • クラック(ひび割れ) :地震の揺れはもちろん、木の乾燥収縮でも割れます。特に新築1〜2年目は木が動くため、高確率で割れます。
  • 粉落ち :特に珪藻土は、表面がザラザラしており、服やバッグが擦れると白く粉がつきます。黒い服を着て壁に寄りかかると悲劇が起きます。

2. 掃除不能(汚れは消えない)

  • 水拭き厳禁 :基本的に水を吸い込むため、水拭きできません。コーヒーや醤油が飛び散ったら、染み込んでアウトです。
  • 手垢 :スイッチ周りなど、よく触る場所は手垢で黒ずんでいきます。クロスのように洗剤で拭き取ることはできません。「サンドペーパーで削る」か「上から塗り直す」しかありません。

3. コストと工期

  • 費用は3〜5倍 :ビニールクロスに比べ、材料費も高く、左官職人の手間(工期)もかかります。予算調整で真っ先に削られる対象です。

漆喰 vs 珪藻土(似て非なるもの)

どっちがいいの?と迷う人が多いですが、性質が違います。

特徴 漆喰(しっくい) 珪藻土(けいそうど)
原料 消石灰(石灰石) 植物プランクトンの化石
固まり方 二酸化炭素と反応して自ら固まる 自ら固まらない(接着剤が必要)
仕上がり ツルッとした質感も可能 ザラッとした質感(ゆず肌)
機能 強アルカリ性でカビに強い、耐久性高 穴が多く調湿・消臭性能が高い
弱点 調湿性は珪藻土に劣る 接着剤の質で性能が変わる、粉落ち

落とし穴:初心者がハマる失敗パターン

1. 「接着剤まみれのなんちゃって珪藻土」

ここが最大の闇です。珪藻土は自ら固まらないため、固めるために「つなぎ(バインダー)」を混ぜます。安価な製品はこのバインダーに「合成樹脂(ボンド)」を大量に使っており、珪藻土の穴を塞いでしまっています。これでは 「ただのザラザラした壁」 です。調湿効果は期待できません。

2. 「画鋲の穴が埋められない」

クロスなら「ジョイントコーク」でちょちょいと埋められますが、塗り壁の穴は目立ちます。埋めるには同じ粉を練って埋める必要があり、手間がかかります。

3. 「全部屋に塗って予算オーバー」

家中に塗ろうとして見積もりを見て絶望するパターン。LDKや寝室など「長時間過ごす場所」だけに採用し、廊下や収納はクロスにするのが賢いやり方です。

最短の手順:後悔しないためのロードマップ

  1. 工務店に「何を使っているか」聞く:特に珪藻土の場合、バインダーに何を使っているか(自然素材の糊か、合成樹脂か)を確認しましょう。
  2. メンテナンスキットを確認する:引き渡し時に、補修用の粉やタッチアップ材をもらえるか確認してください。自分で直す覚悟が必要です。
  3. LDKの「天井」だけクロスにする:壁は塗り壁でも、天井まで塗るとコストが跳ね上がります。天井は汚れにくく、手も触れないので、似た色のクロス(漆喰調クロスなど)で妥協するのも手です。

末尾:リンク集(出典+事例)

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