減築は「ただ壊す」だけではない。 「屋根と壁を作り直す」 工事である。

結論：子供が独立したシニア世代にとって、2階を撤去して平屋にするのは「最強の終活」だが、費用は1000万円を超えることもある。中途半端に部屋を削るならやらない方がマシ。

子供が独立して夫婦二人だけになり、2階の子供部屋が「開かずの間」になっている。掃除も大変だし、階段の上り下りも辛くなってきた。そこで思いつくのが「減築（げんちく）」です。家を小さくすることで、暮らしやすくなり、耐震性が上がり、固定資産税も安くなる。メリットだらけに見えますが、実は「家の一部を切り取る」工事は、新築よりも高度な技術が必要で、費用も予想以上にかかります。

判断基準：あなたの減築計画は「コスト」と「メリット」が見合っているか？

減築が理想の住まいを作るか、無駄な出費になるかは、工事の規模と目的の明確化にかかっています。

0. まず "工事の規模" を理解したか

減築は、単に解体して終わりではありません。

• 屋根・外壁の再生 ：部屋を切り取ると、その断面が露出します。そこを塞ぎ、新しい外壁を作り、屋根を架け直さなければなりません。また、撤去した部分と残す部分の「取り合い（接続部）」の防水処理は非常に難しく、雨漏りの原因になりやすいポイントです。
• 耐震バランス ：家の一部を削ることで、建物の重心が変わります。バランスが悪くなる場合は、壁を増やすなどの耐震補強が必要になります。逆に、重い2階をまるごと撤去して平屋にする場合は、耐震性能が劇的に向上することが多いです。

1. コスト対効果（ROI）

「小さくするんだから安くなるだろう」は甘い考えです。

• 費用：2階を撤去して平屋にする大規模な減築の場合、解体費、屋根・外壁の作り直し、内装リフォーム、耐震補強を含めると1000万円〜1500万円かかることも珍しくありません。「建て替え」や「住み替え（マンション購入）」と比較して、どちらが得か冷静に計算する必要があります。
• メリット：
  • 固定資産税の軽減：延床面積が減るため、税金が安くなります。
  • 光熱費の削減：冷暖房効率が良くなります。
  • メンテナンス費の削減：外壁や屋根の面積が減るため、将来の塗装費用などが安くなります。
  • バリアフリー化：生活が1階だけで完結するようになります。

2. 失敗パターンを先に潰せているか

• 「雨漏り」：施工不良による雨漏りが最も多いトラブルです。減築の実績が豊富な工務店やリノベーション会社を選ばないと痛い目を見ます。
• 「収納不足」：部屋を減らしすぎて、今まで押し込んでいた荷物が収まらなくなるパターンです。工事の前に徹底的な「断捨離」が必要です。
• 「ローン残債」：住宅ローンが残っている場合、勝手に建物を壊して担保価値を下げることはできません。必ず金融機関の承諾が必要です。

最短の手順：後悔しないためのロードマップ

1. 図面の捜索：新築時の図面（特に構造図）を探し出します。これがないと正確な耐震診断ができず、工事費が上がります。
2. 相見積もり：「建て替え」と「減築リノベ」の両方を提案できる会社に相談し、それぞれの見積もりとメリット・デメリットを比較します。
3. 業者の選定：普通の解体屋やリフォーム屋ではなく、「構造計算」ができるリノベーション専門店や建築士事務所に依頼します。

ページ内で扱う基礎情報（判断に必要な最小限）

減築の種類

• 2階撤去（平屋化）：最も効果が高い減築。建物の軽量化により耐震性が上がり、階段のない生活が手に入ります。
• 一部撤去：日当たりを確保するために隣家に近い部屋を削ったり、駐車場を作るために下屋（げや）を撤去したりするケース。
• 吹き抜け化：床を抜いて吹き抜けにすることで、延床面積を減らし（固定資産税対策）、開放感を出す方法。外壁や屋根をいじらないので雨漏りリスクは低いです。

末尾：リンク集（出典＋事例）

1. 事例・ビフォーアフター

• YKK AP 戸建て性能向上リノベーション実証プロジェクト：断熱改修とセットで行うリノベ事例。

2. 補助金

• 長期優良住宅化リフォーム推進事業：性能向上リフォームに対する補助金。
• 自治体の耐震改修補助金：旧耐震基準の家を改修する場合に出ることがあります。

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